おしゃれな欧風ワイン蔵 取材報告  (by えつこ)

新潟県巻町  カーブドッチ ワイナリ

第 7 話

うわー、息ができない。
そうです。発酵によって生じた炭酸ガスが吹き出してきて顔を近づけたときに息ができなかったのです。
決して頭をぶつけたりしたのではありません。
   
再度、恐る恐るゆっくり中を覗いてみました。タンクの投入口ほぼいっぱいにグチャグチャになった葡萄の実と皮と種と果汁が入っていて、その隙間からブクブクと蟹の泡のような物がしきりに出ているのが見えます。
   
まさに今、発酵の真っ最中。すごーい感激です。
このタンクは中に撹拌用の回転する棒が付いていて定期的に時間が来るとそれが回転し、撹拌することにより均等に発酵が進むようにするそうです。
葡萄を投入し、酵母を加えるとタンクの中で発酵が始まります。赤ワインは「マッシュ」で仕込みます。発酵が始まると温度が上昇し始めます。そこでタンクの外側下部に冷水を流し、温度の上昇を防ぎます。お酒でもそうでしょうが煮立つような温度になると何でも品質が低下します。そこで一定以上にタンク内の温度が上がらないように水冷式でタンクの温度を低温に保ち、品質の良いワインになるようにゆっくり発酵させるそうです。そして、時々「マッシュ」の色や渋味などを検査し、充分にそれらの成分が抽出されたと判断されたときに圧搾機にかけられ、液体とカス(皮や種)に分離します。
このような果汁を含めて液体だけになった状態の物を「マスト」と呼びます。
つまり、圧搾機にかけて「マッシュ」を「マスト」とカス(皮や種)に分けることになります。

この機械が圧搾機です。名前はウエルネス式プレス機。
   
さっきの撹拌タンクの下と写真手前と2台ありました。ちょうど手前の圧搾機のふたが開いていたので構造を説明してもらいました。
   
機械全体は大きな横長の円筒形をしています。そして、その円筒形の胴体の部分が大きく開くようになっています。この胴体の中心にゴム製のチューブが入っています。撹拌タンクから運ばれてきた「マッシュ」はこの胴体の中に入れられ、ふたをします。
そして、胴体が回転軸を中心に回転すると同時に中のチューブに圧搾空気が入り、ちょうど内側から風船をふくらませるようにします。すると「マッシュ」が押しつぶされて「マスト」だけが押し出され、皮や種などのカスは円筒容器の内側にチューブの膨張で押しつけられてへばりつきます。こうして1回1回圧搾機で「マスト」を造るわけです。
ちなみに、ワイナリーで使われている圧搾機には大きく分けて2タイプの圧搾機があります。1つは今ご紹介しましたウエルネス式プレス機。もう1つはヴァスラン式プレス機です。
こちらは外見は同じように横型の円筒形をしていますが、圧搾の仕方が違います。こちらは円筒形の一方の端から油圧で押し、反対側の端に押しつけるように搾る形式の機械です。
さて、赤ワインの場合はここに来るまでに約10日間ほど撹拌タンクの中で発酵を続けてきたわけですが、まだ発酵が終了したわけではありません。この後、マストだけが発酵タンクに送られて更に発酵が続きます。
    …第8話につづく…

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