こだわりの酒蔵見学 取材報告2  (by えつこ)

新潟県弥彦村  弥彦酒造

第 3 話

 次はお米を削る精米です。
 この蔵では精米は山形県のA精米業者に委託しています。ここは「十四代」「磯自慢」「開運」なども委託している業者で、お米の産地と太いパイプを持っています。最高の山田錦は生産量が限られていてなかなか手に入りにくく、上記の蔵元と一緒に共同購入することで必要量をなんとか確保しているのだそうです。また、精米機は日進月歩で進歩します。ここでは最新の精米機を使用し、低温原型精米など最新の技術で最高の精米をお願いしているのだそうです。 続いてお米を洗う洗米の工程です。この機械でお米を洗います。中心のパイプからお米が出てきて流水で洗います。
      
 洗ったお米は流水と一緒に隣の機械に運ばれます。
    
 この機械の中には網状のドラムが入っています。お米はそのドラムの中ですすがれて下のステンレス容器に移ります。
    
 3年前に来たときはこの容器はまだ木でできた樽のような物でした。木の樽はどうしても雑菌が付着しやすく衛生的にもこの方が良いとのこと。
 この容器の中でお米に水を吸わせる浸漬をおこないます。
 そういえば前回お伺いしたときにこの蔵独自の秘密兵器「調湿機」がありましたが精米機の性能が向上し、思い通りに湿度を調整できるようになったため、造りの混み具合やお米の湿度の状態に応じて必要があるときだけ使用しているそうです。

 浸漬が終わったお米は水から上げて、水分の均一化を図るためにしばらく休ませます。
 小さな蔵ですので蔵人もわずかです。杜氏の下の若い蔵人はたくさんの仕事をてきぱきとこなしていきます。杜氏が指示を出さなくてもお米の処理から下準備まで自分でどんどん工夫しながら着々と仕事をしています。若手が着実に育ってきて、将来が楽しみなんですと語っていた大井さん。とても充実感のある良い表情をしていたのが印象的でした。
 人材といえばこの蔵では蔵人は通年雇用をしています。他では冬場の仕込の時だけの臨時雇いが多いようですがここでは違います。
 臨時雇いの場合は1日いくらの日当がかかります。ですから経費を切りつめるために造りの期間を限ってしまう酒蔵もありますが、ここでは通年雇用ですからじっくりと長い期間をかけて腰を落ち着けて酒造りに取り組むことができます。
 また、営業や事務員に至る全ての社員が酒造りの技能士の資格を取ることを目標に勉強しています。そうすれば誰でもどんな質問にでも答えることができるでしょう。
 社員が一丸となって良いお酒を造れるようにと話し合った目標なのだそうです。
 さて、ようやく次は本日のメインであるお米の蒸かしの場面です。
    
 ゴーゴーとバーナーの燃える音がものすごく、甑(こしき=セイロ)からはモクモクと湯気が立ち上っています。
 今日の蒸し米は普通酒用のもの。五百万石で精米歩合60%。甑の上部の方が蒸し上がりが良いため、麹に使うお米を上に、仕込みタンクに直接加える掛米が下に入っています。
 バーナーが止まり、あたりに静けさと緊張感が漂います。あれほどモウモウと立ちこめていた湯気が弱まり、膨らんでいた甑のカバーがゆっくりと萎んできました。お米の蒸し上がりを確認しています。まだ様子を見ています。さあ合図と共に蒸し米を掘り出します。

    …第4話につづく…

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