こだわりの酒蔵見学 取材報告2  (by えつこ)

新潟県弥彦村  弥彦酒造

第 7 話

 暖かい麹室から出て仕込み蔵に向かいます。キーンと寒さを感じます。
 私たちが麹室に入っている間に先程の甑で蒸された掛米はどうなったか、そこから追跡してみましょう。
 放冷機で適温に冷やされた蒸し米はエアーシューターというホースの中を圧縮空気で蒸し米を運ぶ機械で運ばれます。そのホースの先は仕込み中のタンクの上に掛かっています。
    
 お酒の仕込はまず、小さなタンクで麹と酵母と水で「もと」(酒母=お酒の元)を造ります。次に大きなタンクに「もと」を移して1日目に「添え仕込み」2日目は「踊り」といってお休み、3日目は「仲仕込み」、4日目に「留め仕込み」と段々にその量を増やしていき、後は温度などに注意しながら発酵が進むのを見守ります。通常は仕込み回数が3回のため3段仕込みと言います。この仕込の時はその都度に麹と蒸し米(掛米)そして水を加えることになります。この掛米として使われたのでした。
 発酵途中のタンクを覗いてみましょう。前回ここでタンクの中は発酵によるタンサンガスが充満していますので落ちたら死にますよと注意されたことを思い出します。そんな話をしながら覗いてみました。
    
 まずは先程、掛米をエアーシューターで運び込んだタンクから見せてもらいました。この中は「添え仕込み」をおこない酒母に第1回目の麹米と掛米と水を加えた物です。
 水面はタンクのはるか下の方です。そうですね。大体7分の1くらいの所でしょうか。
    
 まだ発酵が弱く水面は何の変化もありません。香りはわずかに酒母特有のバナナや甘いリンゴのような香りがします。

 次はその隣の吟醸酒のタンクですがその中は発酵も終盤のようで青リンゴのようなフルーテイーな香りがとてもすがすがしくおいしそうです。
    
 ここの蔵では発酵の最中に泡が立たない「泡なし酵母」を使用しているため液面には若干、細かな泡がありますが静かでとてもきれいです。液面はタンクの7割に達しています。
 仕込は「添え仕込み」の量を1とすると「仲仕込み」で2倍、「留め仕込み」で3倍とその量は段々増えていきます。
 お酒というのは最初から全て同じように造るのではなく、決めたお酒を造るためにはこのお米とこの酵母を使って温度はこのようにと目的のお酒のために最初から設計通りに造り上げていきます。ですからそれぞれのタンクもその時々によって個性的です。
 さて、ハシゴを降りて次のタンクを見ようと移動しているとタンクの胴に巻かれている幅の広いゴムのベルトが目につきました。
 何にでも興味津々の私はさっそく質問です。
      
 この中は細い管が入っていて、冷却水が循環するしくみになっています。これで発酵による温度上昇を抑え、低温でゆっくり発酵させるのに有効なのですと教えてくださいました。
 改めて他のタンクを見渡すと全てのタンクに同じように冷却装置が取り付けられていて温度管理に非常に気を配っている様子が伺えました。
 次は仕込み16日目の純米吟醸酒のタンクです。
    
 発酵もピークを越え、おだやかに静まりかえっています。香りは甘いリンゴのようなフルーティーな香りが鼻をくすぐります。
      …第8話につづく…

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