第10話
タクシーに乗って、「酉の市会場まで行ってください」ということで、近くまで行って降ろしてもらいました。さすがにすごい人混みで、道路の両側には食べ物やさんの露天が軒を連ねていました。ところが、どんどん進んで行ってもいっこうに酉の市らしい、「くまで」を売っているお店が無いのです。途中にお巡りさんが立っていたので、道を尋ねたのですが、全く予備知識のない私たちには、恐らく朝から同じように道ばかり聞かれてウンザリしているお巡りさんの不親切な説明ではさっぱりわかりません。そうこうしているうちに段々さびれた所に出てしまったり、同じ道を行ったり来たりしてみたり、でも人の流れを見ながら進んでいくと、やっとありました! 一本道を入るとそこはまさにくまでやさんの通りです。今度は隣から隣まで、隙間無くくまでやさんしかありません。ますます通路は混み合い、主人と離れないようにするのが大変です。 若衆の威勢の良い呼び込みや、手拍子・かけ声が、賑やかさを一層際立たせます。 |
大混雑の中、やっとの思いで神社にたどり着いた私たちは、商売繁盛をしっかりお願いしてまいりました。そして小心者で?露天で値段の表示の無いくまでは、怖くて買えず、この神社の所で売っていたご祈祷済みの『かっこめ』を買うことにしました。ここでは、シャンシャンの手拍子こそ無い物の、火打ち石をカチカチと打ってから渡してくれるのです。「これならご祈祷済みなんだから一番確かだよね」そして、これもまた縁起物という『切山椒(きりさんしょう)』と言うお菓子をお土産ように買って来ました。 雑踏を抜け、大江戸珍道中最後の行動予定に移ります。 |
ジャァ〜ン!やっと来ました大都会東京って感じでしょ。最後の行程は、主人の古くからの友人夫婦と一緒に夕食をとることだったのです。場所は銀座。なぜか今回の視察旅行は東京と言っても、下町近辺が多く、『大江戸珍道中』の名のごとく、ほとんど都会を感じない様な所ばかりだったのですが、最後に来てようやく華やかな場所へやって来ました。 そんなわけで、夕食前に銀座の町をブラブラする事にしました。まずは、一昨年のオープン時話題になったエルメスの総ガラス張りビル。一応、話の種に中に入っては見るものの別段欲しい物があるわけでもなく、フ〜ンて感じ。そしてまたブラブラと3丁目方向へ進み、歩行者天国へ。後学のためにいろんなお店のウィンドウディスプレイなどを眺めながら進むものですから、すぐに友人夫婦とはぐれそうになってしまいます。いえいえ、それだけではありません。やっぱり都会慣れしていない私たちは、歩調がどうしてもゆっくりなのです。 |
その上、お上りさんよろしく。すぐにこんな写真を撮ったりしているものですから、当たり前ですね。 歩行者天国を進んでいくと、人だかりができている場所がありました。 そこはミキモトビルの前、何だろうと近寄ると、そこにはきれいなイルミネーションで飾られた、大きな大きなクリスマスツリーがありました。ここで今回初めての主人とのツゥーショット写真が撮れました。いつもカメラマンご苦労様です。 この後、4人で近況をおしゃべりしながらの夕食をとり、私たちは帰りの新幹線へと向かったのでした。 この通り、最後の最後まで、飲んだり食べたりばかりしていたように見えるかもしれませんが、(事実そうかもしれない…)この旅行は、あくまでも酒屋の青年部の視察旅行だったのです。お間違えのないように。 …第10話完結… |