初めての酒造り体験 取材報告  (by えつこ)

新潟県長岡市  葛g乃川

第 10 話

 さて、訳のわからないことを言ってないで続けましょう。私たちは最初に見た蒸し米機のあるフロアーに戻ってきました。その途中で大吟醸や純米大吟醸を造るときには極力、機械を使わず、麹を造るときは麹蓋という昔ながらの木の入れ物を使い、洗米もざるで手洗いをしていると話してくださいました。
 さて、今度はフロアーの奥にあるタンクを見るようです。でもその前にもろみの味見です。
    
 テーブルの上に2つ、きき猪口(ちよこ)が置いてあります。中には種類の違うもろみが入っているようです。
 片方は精米歩合60%の純米酒用のもろみでほぼ出来上がり間近のもの。
 もう一つは同じく精米歩合60%の本醸造用のもろみで、こちらはあと2〜3日で発酵が終わるというものです。
 最初のもろみは擦りリンゴを思わせる甘く優しいリンゴの香り。味は発酵途中の炭酸ガスが残っていて酸味が強く、まだピリピリする味わい。麹の香りが強く、アルコール度数が高いせいか力強く、そして辛く感じました。
 それに比べて後者は香りは落ち着いた、おだやかな香りで米粒の食感が残っていてシャープな辛さを感じました。
 このフロアーにはその他に色々なサイズのタンクがあり、壁際に中くらいのタンクがあり、この中は純米大吟醸のお酒が発酵途中だそうで、こちらも覗かせてもらいました。
    
 2本並んでいるタンクのどちらも純米大吟醸の発酵途中ですが覗いてみると全然違って見えます。
 左のタンクは小さな泡が少しだけあってその泡も白くて細やかな感じに見えます。

    
それに比べて右のタンクはどうでしょう?
 右のタンクの中は今、盛んに泡が立っていて色はクリーム色。まるで綿のような泡です。
    
 どうですか?写真でも全然違う様子がわかるでしょう?
 でも、このどちらも同じお米で同じ発酵時間で、10日目のもろみです。
 違いは酵母だけです。
 左は泡なし10号系酵母で、右は9号系酵母です。
 左の香りはやや弱く、さわやかなリンゴを思わせる優しい香り。
 右は左に比べると香りの立ちが良く、バナナを思わせるフルーティーな香りがしました。
 このような最高級酒となると、小さなタンク(1トン)で本当に手造り。
 温度管理も徹底していて、最高温度が10度Cを越えないように低温で長い時間をかけて緩やかに発酵させるのだそうです。
    
 大吟醸と純米大吟醸との違いは大吟醸には少量のアルコールを添加しますが、そうすることによってお酒本来の良い香りをお酒として味わうことができますが、純米系の場合はその良い香りが、ややカスの方に移ってしまう傾向があり、せっかくの香りがお酒に十分に行かず、もったいないんですよと言われました。
 また、お酒を造るにあたって、火落(ひおち)菌という大敵がありまして、不衛生な環境で酒造りをすると、運が悪いとその菌が増殖してお酒が白く濁ってしまって商品にはなりません。でも、火落菌はアルコール度数19度以上では繁殖できませんのでアルコール添加で事故を防ぐこともお酒の安全性から考えると一つの意味があると言うことができるでしょうと説明してくださいました。

    …第11話につづく…

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