初めての酒造り体験 取材報告  (by えつこ)

新潟県長岡市  吉乃川

第 17 話

 高級酒は昔ながらの和釜とセイロでお米を蒸し、先程の麹室で種付けをしますが、それ以外はこの放冷機のところで種付けをするのだそうです。お仕事の邪魔にならないように気をつけながら覗き込ませていただきました。
 種付けをする場所は違っても、ここでも麹菌の入った篩(ふるい)を木の棒でたたいて、まんべんなくお米の上に麹菌を振りかけています。
    
 私が覗き込んでいると作業をする手を止めて、気さくな蔵人のお兄さんが「これが麹菌です」と見せてくれました。
 それはまるで抹茶のように緑色をした粉末でした。・・・おいしそう?。
 この機械もベルトの移動速度や送風の強さでお米の冷やし方を調整しているようです。今、流れてきているお米は五百万石、精米歩合65%だそうです。
 機械の右上に、いくつかのランプがあり、そのうちの1つに明かりがついています。
 これは麹室に通じていて、麹用のお米を蒸すときに、室に引き込んだお米の温度が高いとか低いとか注文をつけるときに使うランプなのだそうで、離れた場所からの指示が聞こえないために、そのランプの光っている指示でこちらの放冷機で温度調整をするのだそうです。
 放冷機を通って冷やされたお米は、ここでバラバラに崩されて必要な場所にパイプを通ってエアーで運ばれていきます。
    
 このように作業各所で蔵人達が自分の仕事に責任と状況判断を伴いながら気さくに明るく仕事をしている様子がとても心暖かく感じました。
 続いて麹室に行きます。これから「引き込み」の作業です。

 午前中に最初に入った麹室に来ました。午前中はここの麹を隣の部屋の自動製麹機に運びましたので何もない状態です。
 これから、ここに放冷機で種付けをされて適温に冷やされた麹米がパイプを通ってエアーで運ばれてきます。それを「床むろ」に平らに盛る作業です。
 シューという空気の音と共にお米が運ばれてきました。台の中央に設置されたパイプの端からお米が出てきます。そのお米をアルミのスコップで両サイドに散らしていきます。
 とりあえず私はすることがありませんので、まず、味見。
    
 これも大事なお仕事といいましょうか、皆さんにお伝えするには食べてみることが一番と考えている私は早速、手にとって食べてみました。
 今回の「引き込み」は1200kgということで、少しくらいでは減り目も見えません。
 蒸されたばかりのお米に、かすかに黒い粉末の粒が付いているように見えます。よーく見ないと、ほとんどそれとはわからないくらいですが、肉眼でようやく確認できるくらいです。
 作業は続き、交代でスコップをにぎり、お米を平らに盛り上げていきます。
 作業をしながら平石さんが今日は「引き込み」から「出麹」まで全ての麹に関わる仕事をされたことになりますね。1日で全て体験できるなんて非常にめずらしい事なんですよと言われました。
 その間も蔵人は運ばれてくる蒸し米の温度を測っています。ここに運ばれて来たときの温度は32度Cで推移しているようです。
 突然、温度を測っていた蔵人がツカツカと壁のスイッチの方に向かっていきます。
 何かスイッチを切り替えたようです。
 これは、まさしく先程の放冷機に指示を出すためのスイッチのようです。
 作業の途中ですが私たちは隣の自動製麹機の様子を見に行きました。

    …第18話につづく…

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