初めてのウイスキー蒸留所 報告記  (by えつこ)

山梨県白州町  サントリー白州蒸留所

第 6 話

 案内看板の前で見学コースの説明と所要時間の説明があり、いよいよ研修開始です。
 あれ?赤い顔のおじさん達も一緒です。そうです。観光で訪れた団体さんと同じ扱いにされてしまったのです。すでにバスの中で出来上がっているおじさん達はダラダラ、ノロノロ。騒がないだけマシでしたが、これでは私たちの研修どころではありません。こんなことにならないようにと事前にお願いして他の団体と一緒にならないようにと時間を決めてもらったのに。と主人はカンカンに怒っていました。きっとどこかで手違いがあったのでしょう。とりあえず仕方がないので赤い顔の団体さんと一緒に進みながら一般見学コースの報告をします。
 まずすぐ近くの蒸留所の建物に移動します。そのホールの写真パネルで説明開始です。
 この工場はウイスキー蒸留施設と貯蔵庫群で構成されていて、広さは25万坪。東京ドームの64倍の広さです。
 次のパネル見てください。手前の方が工場群で奥の方が貯蔵庫群です。

 貯蔵庫は全部で23棟あり、そこに眠る原酒は60万樽。1樽はウイスキー300本分の大きさなので本数に換算すると膨大な量になります。また、工場周辺の森林は計画的な植林と択抜(森林全体を考え、必要な木が残るように樹を選択して伐採すること)してよりよい森林にするために保全活動をしているのだそうです。そして、その森林はバードサンクチュアリーとして野鳥保護に役立てているそうです。
 サントリーは1923年に京都郊外の山崎に蒸留所を作ってから本格的なウイスキー造りを始めたのですが、その後50周年を記念して第2工場を建設するにあたってウイスキー造りに最適な良い水と良い環境を求めて10年間にわたって日本全国を探し求めたそうです。そして、選ばれたのがこの白州の地だったのだそうです。その自然のすばらしさから説明が始まりました。

 まず、この白州の地は甲斐駒ヶ岳に源を発する尾白川や神宮川の大きな州(扇状地)になっています。甲斐駒ヶ岳は表面が花崗岩でおおわれていて、この花崗岩は年月とともに風化して、その中の石英という硬い水晶にも似た白い粒だけが風化せずに残り、それが白州の地名の由来とも言われています。長い年月に降った雨や雪がこの水晶のような層をくぐり抜けるために、ほとんど有機物を含まないすっきりとしたキレのあるおいしい水になるそうです。
   
 続いてウイスキーのできるまでという話です。ウイスキーは二条大麦を原料とするモルトウイスキーとトウモロコシなどを原料とするグレーンウイスキーの2種類があり、この白州蒸留所ではモルトウイスキーのみを造っているそうです。
 蒸留して出来たウイスキーの赤ちゃんは樽に入れられて短いもので6〜8年、長い物では20年、30年と熟成させるのだそうです。
 この熟成期間中に樽を通して回りの空気を取り込むためにもし、海の近くの潮風が吹くような所で貯蔵したような物と、自然の森の中で貯蔵した物では全く違う個性を持ったウイスキーになるそうです。つまり環境に非常に影響を受けやすい物だということです。言い換えればウイスキーも1つの地酒と言っても良いのではないかと言うことです。
 そして、ウイスキーに仕上げるには最終的にブレンダーの仕事になるのです。約20〜40種類の原酒を混ぜ合わせて1つのウイスキーを造るのだそうです。
 それではモルトウイスキーの原料からご紹介しましょう。二条大麦から作られることは前にお話ししましたが案内嬢の説明不足の所は主人が注釈を入れてきましたのでそれも書いておきます。
(主人注釈:本来、麦は真上から見るとちょうど雪の結晶のように放射状に6つの方向に実がなる。これを6条(大)麦という。しかし、品種改良の結果、他の4つ(条)を小さくして残りの2つ(条)の粒を大きくしたのが2条大麦です。そうすると粒が大きくなって原料として使うのに適しているからなのだよ。)
フーン。なるほどね。
    …第7話に続く…

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