初めてのウイスキー蒸留所 報告記  (by えつこ)

山梨県白州町  サントリー白州蒸留所

第 7 話

 いよいよ製造工程の話に移りますが案内嬢の説明で不足の点や不正確の点など時々主人の注釈を挟みますのでうるさがらずに聞いてやって下さい。
 1.精麦・・・
 ウイスキー造りの旅立ちは麦芽造りから始まります。2条大麦にたっぷりの水と空気を吸わせて発芽させます。そうすると芽の周辺にデンプンを糖に変える働きをする糖化酵素(アミラーゼ)ができます。この間5〜6日。ここで一度熱風で乾燥させて発芽を止めます。そして芽だけを取り除いた物が麦芽と呼ばれる原料です。
     
(主人注釈:スコッチウイスキーは、この麦芽乾燥の時にピート炭という寒いスコットランド地方の原野に自生するヒースという植物が長い年月で堆積してできた泥炭を乾燥させて燃料にしたために、ヒースの香りが麦芽に付き、それがスコッチウイスキーの特徴の一つになっている。)のだそうです。
 2.仕込み・・・
 麦芽を細かく砕き、温水とともに仕込み槽に入れます。やがて麦芽はお湯に溶け、糖化酵素の働きでデンプンが糖に変わります。この間10時間。そして、これを濾過し、甘い麦汁ができます。この麦汁は麦茶にたっぷりお砂糖を入れたような物だそうです。
   
 しかし、残念なことに今、この工場は長期メンテナンス中のため製造ラインが全て止まっていて実際に確かめてみることは出来ませんでした。
(主人注釈:麦汁の糖度は約12度で、かなり甘く感じる。)そうです。
 3.発酵・・・
 麦汁を発酵槽に移し、酵母を加えて発酵させます。麦汁中の糖分がアルコールと炭酸ガスに分解されて、ウイスキー独特の香気成分が造られていきます。約3日でアルコール度数7%の「もろみ」(ウオッシュ)となります。
 ここでは発酵槽に大きな大きな木の桶を使用しています。

 なぜ木の樽を使うかと言いますと、その理由としては木質の微生物が発酵液に入り、特に乳酸菌が活発に働き、果物を思わせるような甘酸っぱい香りを漂わせてくれるのだそうです。白州に住み着く乳酸菌を効果的に利用するためにあえて木の桶を使っているのだそうです。
   
もしここでステンレスの桶を使ったとするならばまた、違った物が出来るそうです。ちなみにこの桶の高さは4.7m、容量は72,412Lもあります。私たちは中2階を歩いて見学しているのです。直径は?と訊ねたら後で調べてお知らせするとのこと。
 ここまでがほとんどビールの製造工程と一緒なのだそうです。ウイスキーはこの後、蒸留の工程に進みます。
(主人注釈:発酵中は乳酸菌から発生する酸の風味と炭酸ガスの重い空気を感じ、発酵終了後は落ち着いたもろみ臭がある。)そうです。
 4.蒸留・・・
 蒸留はモルトウイスキーの場合は単式蒸留器(ポット・スチル)を使用します。もろみを1回ずつこの銅製の釜の中に入れて下から直火でもろみを加熱し、出てきたアルコール蒸気を長い首で冷やして液体状に戻すのですが、これを蒸留といい、全部で2回するのだそうです。1回目は初留といい、アルコール度数20度の雑味成分の多いアルコールになります。そして、2回目の蒸留を再留といい、ようやくアルコール度数60〜70度のアルコールになりますが、初めの部分と終わりの部分はまだ雑味成分があるためカットして真ん中の好ましい香気成分をバランス良く含んだ本留液だけを樽詰めするのです。これがニューポットと呼ばれ無色透明の液体で荒々しい個性を持った赤ちゃんウイスキーの誕生です。
(主人注釈:加熱手段として直火と蒸気(スチーム)の2通りあり、直火は一気に加熱するのでもろみの個性が出やすく、スチーム加熱の場合は穏やかなウイスキーになる傾向がある。)     …第8話につづく…

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