初めての酒蔵見学 取材報告2    【by Etuko】

栃尾市 越銘醸株式会社  (現在は長岡市に合併)

第 1 話

 酒屋に嫁に来て間もない頃、この業界のことは右も左も分からず、主人に連れて行かれるままに初めて蔵見学させていただいたのがここ、栃尾市の越銘醸です。あれから4年の月日が経ち、少しずつ知識と経験と脂肪を身に付け・・・
 何か、弥彦酒造の取材記でも同じような書き出しで始まったような気がしますが、小さな事は気にしない、気にしない。えっ?、気にするって?
 それではアレンジして・・・
 さらに一回り大きく成長した視点で再度、取材報告を敢行。素朴で実直なこだわりの酒造りの様子を今度こそ今までの集大成の気持ちで皆様にキチンとお伝えできるようにご紹介したいと思います。
 2月20日。日曜日。事前の予定では今日、大吟醸の搾りが行われると聞いていましたのでねらいを定めて訪問したのです。
 どの酒蔵見学の時でもそうですが品評会に出品する最高級酒である大吟醸酒を造っているときは杜氏さんを含めて蔵人達の緊張感もピークです。物見遊山で見物するのは大変失礼なことですが、私たちはこれだけ勉強もし、経験もしてきたので最高のタイミングで見せてくださいとお願いして、その日に訪問する許可を頂いたのです。
 もちろん、ここでは一般の方の蔵見学は受け付けていません。取引の酒販店の同伴でも造りや搾りのタイミング次第ということになります。
 杜氏さんや蔵人のお邪魔にならないように気をつけなきゃという思いと期待と大きな使命感を背負い、まるで体が一回り重くなったような感じでいざ出発。
 三条からは、例によって国道290号線で下田村を通り、峠を越えて40分位。今年の冬は19年ぶりの大雪のせいで道路の両側はもちろん雪の壁。幸いにして風がなかったために吹雪ではありませんでしたが、ときおり雪の舞うあいにくのお天気でした。峠を越えて急に開けてきたなと思ったら、「栃尾市」の看板。そうです。そこが山あいにぽっかりと開けた栃尾盆地でした。
    
 まるで墨絵の世界からようやく人の住む世界に下りてきたという感じです。
 栃尾市は人口約2万4千人。山あいの盆地の中心に昔ながらの小さな市街地。 

 街並みもいわゆるレトロというと言う印象がぴったりの素朴な町です。
    
 裏山と川にはさまれた古い街並みがそのまま現代に残っているというような市街地を通って行くとその中心部に越銘醸はあります。
   
 今年は2回も雪下ろしをしたとか聞いていましたが、さすがに豪雪地ならではの全市一斉除雪の後だったからでしょうか、道路や家の屋根の上にはほとんど雪はありません。でも、空き地などでは人の身長くらいに降り積もった雪が残っています。
 ここに来るのにあまりの大雪に道路事情を心配し、4WDでなければ行けないかと直前まで心配しましたが、一応大丈夫そうだということで乗用車で来たのです。
 車を駐車場に止め、建物正面の事務所に向かいました。その事務所の入口脇に昔のケヤキの板で出来た看板がかけてありました。古いものでもきれいに飾ってあって漆喰の壁に映えてきれいです。
    
 ここの建物は古くからの土蔵と母屋が中心で、豪雪地ならではの柱や梁が太く重厚な建物が連なっています。まるで最近流行の昭和初期の建物を再現したアミューズメントタウンに足を踏み入れたときの感じか、または昭和のまま時間が止まってしまった田舎の建物を想像して頂ければ大体雰囲気は感じ取って頂けるのではないでしょうか。失礼な言い方でゴメンナサイ。
 さて、事務所でご挨拶をさせていただいて、お話しをさせて頂きました。
 こちらのお酒のラベルに日本画家の故広川操一画伯の描いた鶴の絵が使われていますが、お住まいは我が家の近所というか2軒裏なのですが何か関係があるのですかと質問させて頂きました。

     …第2話につづく…

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