初めての酒蔵見学 取材報告2    【by Etuko】

栃尾市 越銘醸株式会社

第 2 話

 日本画家の故広川操一画伯の従姉妹がこの蔵の先代に嫁いできたから、その関係で色々絵があるんだて。本物(現物)は蔵にしまってあるんだけど、ここにも(事務所の壁)掛けてあるよ。と無造作にその絵を壁からはずして見せてくれました。その絵は薄絵の具と細い筆でサラサラと描いたような情緒のある絵で、大きな朱盃と槍を持って踊っている人物画が描いてあり、その朱盃に越の鶴と書いてあるのです。
 高名な日本画家の絵をいとも無造作に事務所に掛けてあり、また、簡単に手にとって見せてくれる。何と素朴な人達でしょうか。
 さて、余談はこれくらいにして、それでは早速、蔵見学のレポートに移りましょう。
 事務所に続く母屋の脇を通り、作業所の前です。
    
 見るからに古い建物ですね。4年前、ここから私の酒造りのお勉強が始まったのだと改めて身の引き締まる思いがよみがえってきました。
 相変わらず入口の上には、しめ縄と昭和9年に隣り合った2つの酒蔵、「越の鶴」の山城屋と「越の川」の山家屋が合併した時の記念の額が掛けられています。
   
 作業場に入る前に、平成16年10月23日の中越地震で栃尾市も甚大な被害を受けましたが、その様子を説明してくれました。まず煙突にヒビが入りまた、ずれてしまったと言うこと。でも度重なる余震で最終的には元の位置に戻ったとか。でも壊れたところはシートで覆って応急処置で使っているとのことです。
 それから、建物は土蔵の見事な漆喰の白い壁が剥がれ落ちて、無惨にも土壁がででしまい、修復が必要な状況だと言うことです。
 作業場に入る手前に建物の脇から外に出られる通路があり、そこから中庭越しに2号蔵を見てみました。
 ここはこの蔵の写真を撮るときに最も美しく見えるビューポイントなのです。

 下の写真が去年までの雪に覆われた2号蔵の漆喰の白壁の様子です。
   
 今年、地震で壁が崩れてその至る所で土壁が出ているのがお分かりでしょうか。
   
 なんともやるせない気持ちになってしまいましたが、感傷にひたっている場合ではありません。お仕事が待っています。
 それではいよいよ造りの現場をご紹介しましょう。今回はご覧の皆様に分かり易くお伝えするために見学順ではなく、造りの工程順にお伝えしようと思います。
 それではスタートです。まず先程の作業所を通り抜け、右に曲がりますと2号蔵に続く通路があります。
 そこにはこの蔵が残した輝かしい表彰状の数々が壁に並べて掛けてあります。ザッと数えて25個くらいでしょうか。
   
 この業界は時代によって変わりますが全国や関東信越地区の鑑評会が1年に2〜3回行われます。ここに飾ってあるのが関東信越国税局鑑評会で18年間に渡っていただいた金賞の賞状。何と!その内2回も主席第1位を獲得したと言うのですから、この蔵の優秀さは言うまでもありません。
 それも普通の人には決して目に付かないこんな蔵の通路にです。
 普通ならこれだけの栄光ですから事務所の壁にずらりと並べて掛けておくとかすればいいのに。なんと欲のない飾り方。
 ぶつぶつと独り言を言いながら、2号蔵の先にある精米所に向かったのでした。
    …第3話につづく…

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