初めての酒蔵見学 取材報告2    【by Etuko】

栃尾市 越銘醸株式会社

第 7 話

     
 シューという大きな音を立てて甑(こしき)から蒸気が上がっています。こちらでは概ね50分かけてお米を蒸すのだそうです。慎重に蒸し上がりを確かめた後に加熱を止め、次の放冷機に木製のスコップなどでお米を移します。
 甑(こしき)の中のお米は通常の場合は1種類ではなく、3段くらいに内容を分けてあります。
 最も上の段が最適な蒸し上がりになりますので主に麹にするためのお米を入れ、最も下の段には発酵途中のタンクに後から加える掛け米に使われることが多いようです。
    
 その理由は甑(こしき)の上の方と下の方でお米の蒸し上がりに若干の差が出ます。下の方、特に底の部分は「肌めし」といい、若干ベタベタした蒸し上がりになるからなのだそうです。
 この「蒸し」の作業で最も重要なことは蒸し米を「外硬内軟」、つまり外側を硬めに、内側を柔らかめに整えることだそうです。
 さて、次は蒸し米が放冷機で冷やされる様子です。蔵人が常にその様子を手にとって確認しています。
   
 通常はこのように放冷機を使って蒸し米を冷やしますが、高級酒になると今でも人の手で麹室に運んで10キロずつ布の上に広げて、大切な子供を扱うように優しく冷やしてやるのだそうです。
 浸漬時の水分量が30%だったお米が、この蒸しの作業で水分量が40%くらいになるのだそうです。そして、エアーシューターで次の場所まで運ばれるときには、そのエアーのお陰で3%減少して水分量が37%ということになるようです。

 温度は正確なところは聞かなかったのですが他の蔵見学でお聞きした時の話を思い出すと32〜34度程度だと思います。
 ここで登場するのが「ひねり餅」。蒸し上がったばかりの熱い蒸し米を少し手に取り、手のひらで押しつぶすようにすると、ちょうど餅のようになります。その加減を見て予定通りの蒸し加減になっているかを確認するのです。
 誰ですか。私の最も好きなところに来たな、なんて声が聞こえそうですが・・・・・・・・・図星です。
 初めて酒蔵見学にお邪魔して、ここで初めて食べた「ひねり餅」が忘れられないのです。
 この業界のことはまだ何も知らないことばかりだったあの頃。その上、初めてお酒造りの現場にお邪魔したときでしたから、何を聞いてもなかなか理解できず、まさか蔵人が真剣に作業をしている、そのお米に手を出して食べてみるなんて考えもしなかった行為でした。でも主人がこうやって食べてごらんと差し出してくれた「ひねり餅」。それを一口頂いたときが最も印象に残った場面でした。人間って正直ですね。食べた物の記憶はしっかりと、いつまでも確かな記憶として残っているのですね・・・。
 読者の皆様にはいろいろご意見もあろうかと思いますがここはそういうことにしておいてください。
 ちゃんと後で食べる方の話題も乗せるように準備してありますのでご心配なく。
 さて、話を戻しましょう。適度な温度に冷却された蒸し米は人の手やエアーシューターで麹室に運ばれます。ここでは麹室は1号蔵の2階にありますのでお邪魔したいと思います。
 おっとその前に手を洗いましょう。
     
 階段を上ります。大きな階段ですね。
     

    …第8話につづく…

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