初めての酒蔵見学 取材報告2    【by Etuko】

栃尾市 越銘醸株式会社

第 16 話

 この藪田(やぶた)式圧搾機の使い方は、発酵が終わったもろみをその袋と袋の隙間に流し入れます。袋は端からしっかりと押しつけてありますのでもろみが漏れることはありません。
 その後、圧搾空気で袋の中の風船をふくらませます。それぞれの袋の中の風船が膨らむことによって、隙間に入っているもろみに圧力をかけます。
 すると、もろみの中のお酒は押されて下に流れて出てきますし、固形物として酒粕が袋と袋の間に挟まれた板状になって残ります。このようにしてお酒を搾るのです。
 この機械で袋を約200枚も使っていて、最大で1回に搾れる量は米100俵分、もろみで8000リットルも搾れるのだそうです。
 実際に使うときは、もろみを入れるのに半日、搾りに1昼夜かかるそうです。
 搾るときは決して急いではいけないのだそうです。もろみを搾るとき、あまり早く搾る(圧力を高くして搾る)とお酒に粕分が多く含まれてしまって濁ってしまうからだそうです。
 この段階でお酒を製品化すると無濾過生原酒ということになりますが、通常は濾過、火入れをして製品になります。   
   
 蔵の中にはまだまだ出番を待っているお酒が静かに眠っています。
 いかがでしたでしょうか。これで一から酒造りの現場を製造工程順にお伝えしました。ようやくこれで私も肩の荷が下りたような安堵感とも充実感ともとれる満足感で一杯です。さすがに疲れました。それでは1号蔵の脇にある応接室に戻りましょう。
 そこは4年前と少しも変わらず、スチームが効いた暖かい部屋です。
 中で休んでいると杜氏がきき猪口を持って入ってきました。4つのきき猪口にそれぞれ違うお酒が入っているようです。
 早速、杜氏から利き酒です。猪口にはそれぞれプラスチックの小さなカップが一緒に置いてあり、もし、皆が口を付ける猪口がイヤなら、そのカップに移してきき酒をして下さいとのことでした。私たちは4年前から色々な酒蔵できき猪口からきき酒をしてきましたからこういうものだと思っていますので全然平気です。

 それではきき酒をしてみましょう。 4つのきき猪口に数字が書いてあってタンクの番号のようです。たった今、貯蔵タンクから汲んできた生原酒です。
    
 きき猪口は左から順に本醸造原酒136、本醸造原酒8、純米吟醸原酒14、純米吟醸原酒11となっています。
 まず左側の2つの本醸造原酒を見てみます。どちらも色は無色透明。136は香りの中に甘味を感じます。生原酒ですから強いアルコールの香りがします。でも口当たりがきれいでキレの良いお酒の感じがします。
 一方、8は香りはおだやかでやはり強いアルコールの香りがします。
 しかし、口に含むときれいで含み香が心地よく、バランスの取れたキレの良いお酒になっているように感じます。
 次に右側の2つを見てみます。どちらもやはり色は無色透明。14は穏やかな吟醸香。口に含むと優しいふくらみを感じます。
 一方、11の方は14よりフルーティーな吟醸香で、バランスの取れた味わいになっているようです。
 そういえば4年前にもここできき酒をさせて頂きましたが、その時に冷たいお酒できき酒をした時と、しばらく時間が経ってお酒が室温近くなってきたときには全然違うものになったことを思い出しました。
 ですからまた、1時間くらい経つと全然違う、寝ていたお酒が起きた状態になってそれぞれの個性が出てくるのだと思います。
 同じように造ってもタンクによって1つ1つの個性が違います。それを目標の酒質、蔵の味とするためにまだまだお仕事は続くのですね。
 エツコのお酒造りの現場レポート。4年前にここからスタートし、色々な酒蔵にお邪魔して教えてもらい、ようやく最初にお伺いした越銘醸さんに戻ってきました。今回のリポートはこれまでお世話になった方々にお礼の意味を込めて、また集大成のつもりで一生懸命にお伝えしたつもりです。いかがでしたでしょうか。
 フーッ、ほっと一息。とにかく私は肩の荷も降ろし、ようやく身軽になったような気分です。身軽?お腹が軽い?アレ?時間はお昼を過ぎています。大変だ。お腹が空いた。
    …第17話につづく…

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