初めての酒蔵見学 取材報告2 【by Etuko】
栃尾市 越銘醸株式会社
第 15 話
酒袋からしみ出したお酒のしずくはタンクの底に付いている口から流れ出て来て酒蔵独特の一斗(18リットル)瓶に集めます。この時に必ずタンクのナンバーと取り分けた順番を記録します。心なしか1から4(右から左)に進むにつれてにごりが取れて澄んできているように思われます。 最初は袋吊りの作業の進行に伴い勢いよく流れ出していたお酒も段々にその勢いはやさしく静かになっていき、一昼夜をかけてその搾りが終了するのです。 最終的に一斗瓶で5〜6本採ることができます。ですから約360リットルのもろみから90〜108リットルのお酒となるわけで、言い換えればもろみの25〜30%しかお酒にならないとても貴重なものと言うことになります。 しかし、全ての大吟醸酒をこのような方法で搾るととても手間がかかってしようがありません。そこで残りは槽型式(ふねしき)圧搾機を使って搾ることになります。 |
これがその槽式圧搾機です。槽という字は水槽などのように水などを入れる容器に使う文字です。ですからこの圧搾機の構造は大きな水槽のような容器になっているのです。 この中にもろみを入れた酒袋を何段かに敷き詰めると、最初は上から圧力をかけるまでもなく、酒袋の中のもろみがそれ自体の重さでお酒だけがほとばしり出ます。 そして槽の端に空いている穴から流れ出てきます。 この穴のことを「槽口(ふなぐち)」と呼び、最初の方に流れ出してくるお酒を「荒走り」、その後を「中取り、中汲み」と呼びます。 一昔前なら蔵人しか味わえなかったであろう生まれたてのお酒なのです。 「荒走り」は若干、白いオリがありますが生原酒としては軽快で若々しい感じのお酒となります。 また、「中取り」はオリがなくなり透明で軽快かつ、味わいとのバランスが良くなってきます。 |
その後、万力のような物で上から押し、もろみを搾ります。 搾ると言ってもぎゅうぎゅうと搾るわけではないのです。 このように、圧力をかけて搾ることを「責め」といい、ボディーのしっかりした重みのあるお酒となります。 大吟醸の搾りでは、大きな圧力をかけないので、非常にもったいない話ですがもろみの40%しかお酒として取り出しません。残りの60%は粕(カス)にしてしまうのです。 何故かって?あまり大きな圧力で搾ると雑味が出てしまうからです。最高に高価な原料を使って、最も手間をかけて、そして最も少なくしかお酒にしない。究極の贅沢ということになりますね。 ここ越銘譲では品評会に出品するための大吟醸酒はそのために特別に造っているわけではありません。 皆さんの口にすることが出来る最高のお酒としてこの大吟醸酒を品評会に出品します。 他の酒蔵の多くは普通の大吟醸酒とは別に、品評会出品用に極少量の特別な酵母を使った大吟醸酒を造り、賞を取るためだけに別に造り分けている蔵が多い中で、ここは考え方がまるで違っていて皆さんから飲んで頂くお酒が受賞することが最もすばらしいことだと考えています。 |
なんとまじめで実直なのでしょう。そしてこのプライドを持った真摯な姿勢こそ、なによりも皆様にわかって頂きたいところなのです。こちらの蔵は本当に宣伝下手。「飲めばわかる」では考えが古すぎると思うのですが、逆にそれが時代に流されない良い意味での頑固さなのでしょうか。 さて、次はもう一つの大型の圧搾機の説明に移ります。大吟醸酒などの高級酒以外は主に藪田(やぶた)式圧搾機を使用します。これは一度に多くのもろみを搾るときに向いています。 以前に他の蔵見学シリーズで詳しくご紹介しましたがご覧になっていない方のために再度ご説明します。この圧搾機の横にアコーディオンの蛇腹のように見えるところがありますね。そこは白い布製の袋になっていて、構造は、その1つ1つの袋の中にそれぞれ風船が入っていて何百枚も横にしてくっつけてあるのです。それらを端からしっかりと押しつけて密着させてあります。 …第16話につづく… |