最新設備の酒蔵 取材報告  (by えつこ)

新潟県新潟市  高野酒造

第 2 話

 考えてみれば酒造りは冬の間だけ行われます。そして出来たお酒を1年かけて売っていくことになるわけですから大変な運転資金がいることになりますね。考えただけでゾッとしてくるようです。
    
 お米の精米は通常1時間で約10%削るのだそうです。でも食用米と違って酒米は最高で60%から70%も削って本当にお米の芯だけにして使います。つまり精米歩合40%〜30%にするにはそんなに簡単に出来るものではないのだそうです。
 食用米のような少ししか削らないときは関係ないのですが、酒米は長時間かけて削ることになります。するとどうしても削るときの摩擦熱でお米の温度が上がり、浸漬した時にお米が割れてしまう胴割れ米の割合が増えてしまいます。
 それで、精米には性能の良い高価な機械を使いたいのですが、それだけ高い機械を導入しても現実的に採算面から考えるとむずかいしいために、外注しているのだそうです。
 最近の精米機は昔に比べると格段に進歩していて、精米中にお米の温度が上がると機械の回転速度を落として胴割れ米の割合を格段に少なくすることが出来るようになったり、また、精米もお米の縦方向や横方向の削り方の調整が可能になったり、人の手では出来ないことが機械の改良で出来るようになったりと、技術の進歩がすばらしいお酒を造りだす大切な要素にもなってきたのです。昔、人の手で精米をしていた頃は精米の進み加減でベルトを交換したりして何日もかかってやっていたのですが、今では、精米歩合30%〜40%で時間としては約40時間から50時間程度で精米できるようになったということです。
    
 お話を聞きながら精米してあるお米を見させてもらいました。
 これは新潟県産五百万石の精米歩合65%のお米です。本醸造酒用のお米でしょうか。いつも蔵見学させてもらうときに最初に見ることになりますが芯白が白くしっかりしていてきれいなお米です。

 この白米庫で入荷してきたお米をしばらく保管して、精米で失われたお米の水分を空気中の自然の湿度で補います。
これを「枯らし」といいます。
 ですからたくさんのお米が積んであるのですね。
 お米の種類としては山田錦、五百万石、ゆきの精、などを使います。
 そして、「枯らし」が終わったお米は次に「洗米」の工程に移ります。
 いよいよお酒造りのスタートです。
「洗米」は、2階の浸漬室で行います。まずはこの機械でホースを使って流水の力でお米を運びます。ちなみに流れを良くするために水9に対してお米1の割合で運び上げるのだそうです。
    
 ここでは毎日60俵分のお米を使うのだそうです。
 機械の脇にステンレス製のザルが置いてありました。
    
 これは大吟醸などの高級酒を造るときに使うザルで、現在でもそれらのお酒は完全に人の手で造らなければなりません。蔵人を総動員して杜氏のストップウオッチの合図で洗米の作業を行うのだそうです。
 他の蔵見学に行ったときに聞いた話ですが、この洗米は冬の最も寒い時期に冷たい水を使って素手で行います。この作業が最も辛くて厳しい作業なのだと。
 ザルを見ると、どうしてもその話を思い出してしまいます。
 ふと、思いにひたっていると、それでは次に行きますかと声を掛けられました。通路に出て隣の部屋に向かいます。

    …第3話につづく…

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