最新設備の酒蔵 取材報告  (by えつこ)

新潟県新潟市  高野酒造

第 9 話

 麹室はお酒造りの心臓部ですから、いくら酒販店でも簡単に見ることは出来ません。
 もし運良く見せてもらえても、こちらも色々気を遣って、つい遠慮してしまいます。でも、今日は仕込はお休みです。ですから中は空っぽ。気軽に入れさせてもらいました。
 ここだけは通常の内履きから更に履き物を変えます。
    
 本当は頭や服装も気をつけなければなりませんが、中には何も入っていないということで、そのまま中に入れてもらいました。
 中に入ってビックリ。天井から壁までピッカピカ。それもそのはず。全てステンレスで出来ています。
 これを見て、とても安心しました。今日の一番の心配事が解消されたのです。
 実は一般に、新しい酒蔵を造るときに、最も気を使うのはこの麹室なのです。ここでは「製麹室」と呼ぶようです。
 ここではニオイは大敵。麹米にニオイが付くと使い物になりません。ですからここがどんな構造になっているのか気になっていたのです。
 ある東北の酒蔵で麹室を新しくしたのですが、その時に壁を新しい木で造ったのですが、麹にその木の香りがついて使い物にならない事があったのです。
 ですから新しい蔵を造ると聞いたときに麹室はどんな材料でどんな構造になるのかを心配していたのです。
 ここはコンクリートにステンレスの組み合わでニオイのでない構造にしたのですね。まずこれを見て一安心。これなら良いですね。
 さて、最初の部屋には中央に「床むろ」がデーンと据え付けてあります。
     
 いつでも蒸し米が入ってきてもいいように道具がセットしてあります。
 ここの温度は34度Cで湿度が30%に空調されています。当然温度も湿度も調整できる機械を備えているのだそうです。

 ここに入ってくる蒸し米は麹を造るためのお米です。麹とは蒸し米に麹菌を振りかけて、そのお米に十分に麹菌が繁殖したものを言い、その作業を「種付け」と言います。ちなみにこの機械は1日に500kgの麹を処理する能力があるそうです。
 さて、朝、蒸し米が入って来るところからその作業は始まります。
 その時の蒸し米の温度は約28度Cとやや低めの温度です。「種付け」の作業が終わると「床むろ」に平らに盛って麹菌の増殖を静かに待ちます。
 夕方、麹の温度が31度Cに上昇し、切り返しといって、一度バラバラに麹のかたまりを崩してまた、元のように平らに盛り重ねます。
 そして翌朝、麹の温度が35度Cになったら切り返しをし、隣の自動製麹機にペルト・コンベアーで運びます。
    
 扉を開けるとここもまたピッカピカ。壁、天井、そして、自動製麹機までステンレスでどこもかしこもピッカピカ。製麹機は2台あり、1台250kgの処理能力があり合計500kgの麹を生成できるのだそうです    
     
 この自動製麹機の内部は1段式で機械の中段に平らに網が敷き詰められる構造です。その網の上に隣の床むろから運び込まれた麹菌の繁殖し掛けた麹を敷き詰めます。そして機械の上に布をかぶせます。そして、写真の奥に見える上下の空気吹き出し口から所定の温度の風を出して温度調整をして更に麹菌の繁殖を促します。
    
 朝、8時に運び込まれた「床むろ」からの麹は麹菌の更なる増殖によりその温度が上昇していきます。夜10時には38度C、12時で40度C、2時で42度Cと順調に麹が増殖して、ちょうど良い加減になったら徐々に温度を下げて、翌朝の7時30分に34度Cまでその温度を下げて麹の完成となります。この後8時に「出麹」と言ってこの麹室から次の部屋へ移します。

    …第10話につづく…

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