こだわりの酒蔵見学 取材報告2  (by えつこ)

新潟県弥彦村  弥彦酒造

第 10 話

 通常、この蔵の大吟醸酒はもろみの4割しかお酒として採りません。残りの6割を粕にしてしまうように弱い圧力しかかけないのだそうです。何とももったいない話ですね。
 お仕事中手を止めてもらって写真を撮らせていただきました。
      
 袋に酒粕が張り付いているのがおわかりでしょう。この袋の1つ1つにホースが付いていて圧搾空気を送り込めるようになっています。写真の左上に細いホースが何本も移っているのが分かりますか?
 作業はプラスチックのヘラでこの酒粕を剥いで下のカゴの中に落としていきます。
       
 さすがに粕歩合が高く、強く搾らない酒粕はしっとりしていておいしそう。
 ちょっと失礼して酒粕を味見させていただきました。
 アレ?あんまりおいしくない?。
 だってうちのお店で大評判の酒粕です。こんなはずはありません。どうしたの?
 私がとまどっている様子を察して大井さんが説明してくださいました。
 酒粕は本当は吟醸酒くらいのものが香りと味のバランスが良いのです。
 大吟醸の粕は確かに白くて香りは良いですが食べてもあまりおいしくはないとのこと。でもそんなことはありません。以前、うちで味見をしたこちらの大吟醸粕は香りも上品な味わいも最高でした。何となく吹っ切れない私に後で主人が教えてくれました。
 大吟醸酒のしぼりたては確かに香りは良いが味がまだ開花しないのでせっかくの味が乗らず、その本当の力が発揮できていないと言うのです。
 ですから酒粕もすぐに食べてもおいしさを感じにくいと言うのです。
 でも以前のものはおいしかったというとアレはこの酒粕をうちの蔵で夏前まで熟成させてとろりと柔らかくなったら冷蔵庫で更に熟成させた物だそうです。

 十分に熟成したためにおいしくなっていたんだよ。フーン。それでこの時期は色々な酒蔵の粕が家の蔵に置いてあるのだと初めて知りました。
 新しい酒粕は板状で香りはよいですが味が乗っていない。秋頃になると柔らかくなっておいしさが増すのですね。
 ですから粕漬けをされるお客様には最初に軽く一塩で漬けてから普通粕で漬け、最後にその粕を落として吟醸粕を塗ると最高の粕漬けができますよとおすすめしています。とてもご好評をいただいているのです。
 さてと、話を蔵見学に戻しましょう。
生酒など火入れをしないお酒や比較的高級酒は瓶詰めをした後、新しく設備したこの氷温冷蔵室に運び込みます。
    
 ここは3年前にはなかった場所で品質管理には重要な場所になっています。照明も紫外線などのお酒に悪い影響を与えない特殊な明かりになっているそうです。
 中は薄暗く、たくさんのお酒が保管されています。ここは1年中0℃に保たれているそうです。
 次は別棟の製品化工場です。その中ではまず洗瓶機を見せてもらいました。とてもかわいくて小さな機械です。これで大丈夫なのと思ってしまいましたが、ここではほとんど新瓶を使っているためこの程度の機械で用が足りるのだそうです。
    
 もっと近づいて見ましょう。瓶が逆さまに置かれて熱いお湯のシャワーがかかっているのが見えます。機械の中で瓶が移動しながら洗浄、すすぎをされて反対側から回って出てくる構造です。瓶の据え付けと取り出しは人の手でおこなっているようです。
    

    …第11話につづく…

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