初めてのワイン蔵見学 取材報告  (by えつこ)

新潟県上越市   株式会社 岩の原葡萄園

第 3 話

 あ、現場取材の最初は、川上善兵衛氏の銅像の隣にある建物です。

ここがワインの発酵と貯蔵のために、明治31年(1898年)に造った第二号石蔵です。
 この石蔵は563uの広さをもち、三和村原産の石を使った半地下式の構造で、屋根は石蔵内の温度を保ちやすくするために土屋根になっているのだそうです。この第二号石蔵は、現在もワインセラーとして当時の原型を保ちつつ、機能していて、日本のワイン醸造史を知る貴重な遺産として、上越市の文化財にも指定されているそうです。
 では、石蔵の中に入ってみましょう。
建物の入り口を入ると、なだらかな下り坂。そして通路の先に白い木の扉と、その奥に鉄の扉。
その扉の上には石に刻まれた文字。目を凝らしてよく見ると「IWANOHARA WINEYARD SECOND CELLAR  岩乃原葡萄園第二号石蔵」と薄く消えかかっているものの当時を思い起こさせるような文字が読みとれます。それでは皆さん。ご一緒に100年前の世界へタイムスリップ。
 そこは薄暗くてヒンヤリとしていて、まるで広い洞窟のような感じがします。所々にある、ほのかな照明以外は差し込む光もありません。あっ、何か正面に巨大な物体らしきものが・・・
 それは見たこともない巨大な木の樽ではないですか。広い石蔵の中央にそれがドーンと迫ってくるように置いてあります。
    
この樽は数十年前まで実際に使われていた樽で、人が数十人も入れそうな、ものすごく大きな樽です。

質はナラの木でそれがドンと3つも中央にあり、そのまわりに現在使われている通常の大きさのオーク材の樽がいくつも置かれています。
   
 今でも使用されているこの蔵は、年間を通じて6℃〜22℃ほどの温度になっており、程良い湿度が保たれているのだそうです。
 現在この蔵の中で貯蔵されているワインは、こちらの蔵でも「深雪花」という高級クラス以上のものしか置いてないということです。また、その他、例えばTVなどでよく登場する日本で最も有名なソムリエのT崎S也さんのオリジナルワインで、指定畑の指定品種で、指定の樽を使い、貯蔵日数なども指定通りにつくった樽が15樽(ビンで約4500本分)この中にあるのだそうですが、それは業界のプレミアム商品として使われる予定のものや完全にプライベートなパーティーや贈り物にしか使わない物になるそうです。
通常の市販用ではないために、私たちのような一般人には、お目にかかれない代物なんだそうです。
 さて、話を元に戻して蔵の中央にあるこの大きな樽は、何と7000リットルも入る大きさで、左の写真にもある現在使われている樽が225リットル(ビンにすると約300本)というのですからザッと30倍もあるのです。
    
ここ岩の原葡萄園では明治25年から樽の製造もおこなっており、日本最古の樽製造所でもあったのです。大きな樽はその洗浄が何といっても大変で、今ではスチームを使って一気にできるのですが、この樽を使っていた当時はそのような物もなく、樽の下の方にある澱(おり)を取り除くための小さな穴からふんどし一丁の人が中に入り、高足下駄を履いて熱湯をかけながらブラシでこすって洗浄したのだそうです。きっと作業を終えて樽からでてくる頃には、大酔っぱらいだったでしょうね。
     …第4話へつづく…

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