初めてのワイン蔵見学 取材報告  (by えつこ)

新潟県上越市   株式会社 岩の原葡萄園

第 4 話

 二号石蔵にはとても重要な設備がありました。それが雪室(ゆきむろ)で、下の写真にあるのが雪室入口です。ここは当時、雪室とこの石蔵を結ぶ通路でしたが、現在は入ることができません。
  
 川上善兵衛は、外国に負けない良質なワインを造るためには、ぶどうを発酵させるときの温度が高くなりすぎるのを防ぐことが大切と考え、ワイン発酵法に、当時としては極めて珍しい低温発酵法を取り入れたというのです。ここ岩の原葡萄園のある新潟県上越市は、冬場の雪の深さは日本一といわれています。その雪をこの奥の雪室で春から秋まで残し、春、夏はその冷気で石蔵内を冷やし、
ワインを醸造する秋には発酵桶を雪柱で囲み、発酵の時に発せられる熱を冷ますための冷却設備の無い時代に低温発酵を実現させたということです。そう言えば、以前に日本酒の酒蔵へ行ったときにも、お酒のタンクのまわりに雪を抱かせて、発酵時の温度調節をしているのを見たけど、それと一緒なんですね。
   
 やっと石蔵の薄暗さにも慣れてきて、内部の様子が見えてきました。壁は、分厚い長方形の石をぎっしり積み上げてあり、その表面は黒カビでいっぱいです。アレ?この黒カビの風景もどこかで見たぞ。そうだ、これも日本酒の酒蔵といっしょです。この黒カビはアルコールを好むカビだったんだね。フ〜ンやっぱり種類は違っても同じアルコールの蔵だけあって、共通点があるんだね。

 暗かった第二号石蔵を出て、隣の建物の前まで来ると、グゥオーという機械の音がしてきます。そう、ここは製造工場の前です。しかし、扉はかたく閉ざされ、音はすれども中は全く見えない状態。それもそのはず、ぶどうの収穫期真っ最中にお邪魔しているのですから、ワインの製造だって大忙しです。雑菌が入るといけないので、部外者の立ち入りはいっさい禁止とのこと。残念ながら中には入れませんでした。ただ、工場内部にある代表的な2台の機械は工場のすぐ前に展示してあったので、そこで説明をお聞きすることにしました。
   
まず、1台目の機械は、除梗・破砕機(じょこう・はさいき)と呼ばれるイタリア製の機械です。これは、写真の左側に見えるベルトコンベアーを使って収穫したばかりのぶどうをそのまま投入すると、ドラムのような機械の中を通る時に、ぶどうに付いているツルや枝を取り除いてくれる機械なのだそうです。    
   
機械の脇から中を覗いてみると、奥の方から手前に向かって、大きな穴から小さな穴へと無数に穴が空いており、この機械を通ってくる間に仕込みには不要なものを少しずつより分けてくる様子がわかります。そして、最後に機械の下の方から出できた仕込み用の原料(ぶどうの実・皮・種)は、人の手に触れることなく、パイプを通って仕込み用の樽へと直接運ばれるのだそうです。ちなみに、赤ワインはこの工程のあと直ちに仕込みに入り、1〜2週間の発酵期間にはいります。そのため赤ワインの仕込み方法を「もろみ仕込み」または「全粒仕込み」と言うのだそうです。じゃあ、白ワインはと言うと、この機械の隣にある2台目の機械を使った工程を経てから仕込みに入るのだそうです。その機械は次でご説明します。

       …第5話へつづく…

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