初めてのワイン蔵見学 取材報告  (by えつこ)

新潟県上越市   株式会社 岩の原葡萄園

第 5 話

 どうの収穫後すぐに使う除梗・破砕機(じょこう・はさいき)の隣には、またまた何か似たようなピカピカシルバーの大きな機械がありました。これは圧搾機(あっさくき)。
   
この機械は、除梗・破砕機で取り除いていない、ぶどうの実や、皮・種を取り除き、液だけをしぼり出す機械です。
   
上部の横長円筒形のタンクのような容器の中に原料を入れます。内部は2重構造になっていて無数の小さな穴が開いていてる円筒があります。
 言うなれば「ざる」のような筒状の容器があり、その内側から大きな風船状の袋を空気でふくらませ、その圧力で果汁を搾る構造です。その結果、固形物は「ざる」に残り、果汁だけが搾られる仕組みです。
 この果汁は、機械に原料を入れただけで滴り落ちてくるものを「フリーラン(一番しぼり)」その後、圧力をかけてしぼり出した液を「プレスラン(二番しぼり)」と言うのだそうです。
    
そういえば、前話で途中になっていた、赤ワインと白ワインの仕込み方法の違いは、この機械を使う工程順に大きく関係しています。それは、赤ワインは除梗・破砕機を通しただけで直ちに仕込みに入るので、ぶどうの皮も種も果肉と一緒に発酵させるので「もろみ仕込み」または「全粒仕込み」と言うのだそうです。

 れに対して、白ワインは除梗・破砕機の後に続いて圧搾機を通して、全ての固形物を取り除いた液体の状態で仕込みをするので「液づくり」または「液仕込み」と言うのだそうです。
 「フ〜ン、それじゃあロゼはどうなんですか?」とお聞きすると、ロゼは最初は赤ワインと同じように「もろみ仕込み」なんだけれども、発酵の途中で「もろみ」を抜かなければならず、手間がかかるのだそうです。他では赤と白を混ぜることによりロゼにしているところもある中で、ここではちゃんと本場のようにきちんと手順を踏んで作っているのだそうです。しかしその分ロゼは手間がかかります。「どんなに手間がかかっても、ロゼの値段だけを高くするわけにいきませんから、割に合わないんですけどね」と作るときの苦労話が、説明してくださっている岡本さんの口からボソッともれてきました。
 さて、製造工程についての話はこの辺にして、また施設見学に戻りましょう。
 山の方に向かって連なった工場の最も端に、第一号石蔵のわずかに顔を覗かせている石壁の一部を見ることができます。
 第三話で先に第二号石蔵のことをご紹介してしまいましたが、第一号石蔵はその完成より3年前、明治28年(1895年)に作られました。一号と二号石蔵の一番大きな違いは、二号が半地下構造であったのに対して、一号は完全な地下構造であったということなのだそうです。
 しかし、地下構造にした蔵は湿気が多すぎてなかなかうまく機能しなかったために、その反省をいかして第二号石蔵は半地下構造にしたのだそうです。
 また、第二号石蔵は雪室(ゆきむろ)を使い、雪の冷気で石蔵の中の温度調節などをおこなったのに対して、第一号石蔵は冷たい湧き水の力を使って、石蔵内を低温に保ったのだそうです。
 その様子は次の章でご説明しましょう。
       …第6話へつづく…

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