初めての酒造り体験 取材報告  (by えつこ)

新潟県長岡市  葛g乃川

第 3 話

 「瓢(ひさご)亭」の一方の壁際には歴史が物語る過去の品評会の受賞カップがたくさん並んでいました。
 関信越国税局の鑑評会では73回の歴史の中で主席第1位を5回も受賞し、それを含めて通算入賞回数59回。
 また、全国新酒鑑評会では明治44年の第1回から91回の歴史の中で、4年連続金賞を含め、通算17回も金賞を受賞しているなど、県内でも屈指の銘醸蔵の証として記念のカップや賞状が所狭しと飾られています。
    
 でも、決して誇らしげに飾られているのではなく、賞状も適当に壁にかけてあったり、カップもテレビの脇のショーケースに、ただ入れてあるという感じで、ここはゲストルームなんだから、もう少しきれいに飾ったほうが良いのではないかと思いました。
 そうこうする内に会社の人達が入ってこられました。
 営業部次長の佐藤さんの挨拶で始まりました。
    
 今回の1日酒造り体験は参加者10名で行うということ。あまり大勢だと十分に見てもらうことができないので参加者を限定させてもらったということ。
 以前より1年に1度、2月下旬から3月上旬にかけて2泊3日で体験醸造の企画を行っていて、そちらは17回(年)を数えるが、なかなかそれだけの期間、お店を留守にして参加できる人は限られています。そこで今回のような1日で集中的に体験することができる機会を今回初めて企画させていただきました。第1回ということで限られたお店に声をかけさせていただきました。今後ともこの企画を続けていきたいと思いますが是非、自らが酒造りを体験してお客様と日本酒の話をしてもらうきっかけにしてほしい。そして、日本酒の奥深さ、文化を伝えて欲しい。お客様とのネットワークづくりに役立てて欲しいと挨拶されました。

 続いて川上社長からご挨拶です。
 ようやく今年の酒造りも終盤を迎える時期になりました。酒造りには4大要素があり、その中でも最も大切なものは杜氏の力だと思います。
    
 昭和40年に自動製麹(せいきく)機を自社開発し、これがこの業界にとって大発明で、今まで麹造りが最も人の手と技術を要する作業でした。
 しかし、その機械のおかげで泊まり込みの作業もほとんどなくなり、蔵人の通勤制を可能にしました。
 そのおかげで労働環境の改善を行うことができ、良い蔵人を選んで採用することができました。その結果、技術力のある同じ人が長年にわたり造りに参加してくれて、毎年同じように品質の良いものを造り続けることができたというのがこの蔵の特徴だと思います。
 黄綬褒章を受章した鷲頭杜氏から桜井杜氏そして現在は高橋杜氏と受け継がれていますが、皆この蔵に長くいた蔵人です。
 酒造りは杜氏集団の分業制で成り立っています。えてして杜氏が変わるとお酒も変わってしまうことがありますが、そこはこの蔵の特徴として長年同じ人が受け継いでいたせいか、杜氏が変わっても、お酒が変わることもなかったのです。他の蔵に出たことがないから前の杜氏と同じ酒しか造れないということになるのだそうです。
 物作り(酒造り)は人づくり。蔵人の仕事は縦割りの体育会系の仕事。新入りは最も辛い仕事から始めますが辞めた人は今まで1人もいません。人は基本的に物作りが好きなんですね。その蔵人の思いに答えようともっともっと贅沢に酒造りをしていきたいと思っています。
 平成14年4月を1区切りに約2億数千万円を投じて、お酒の瓶詰めをクリーンルームで行えるように改良しました。この設備は県内では最高の設備と自負しており、最高の酒造りそして最高の製品作りを目指して努力しています。
 造りは人の手で瓶詰めなどは機械で省力化することにより安全とコストダウンをはかり、価値と価格のマッチングをはかっています。ということだそうです。
    …第4話につづく…

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