初めての酒造り体験 取材報告  (by えつこ)

新潟県長岡市  葛g乃川

第 5 話

 「酒母」づくりは約2週間の間、小さなタンクで、まるで赤ちゃんの世話をするように大切に育てます。
 それではその様子をご紹介しましょう。
 まず、昨日仕込んだばかりのもろみです。見た目はお米の粒がはっきり見え、水にちょうど浸っているようです。口に含んでみますと米粒の触感があり、ゴトゴトした感じ。味は乳酸のせいかすっぱい味です。
 続いて仕込から4日目のタンクです。発酵による泡が立ち、先程の様子に比べて液体の部分が増えてきたようです。香りはまだ少ないようですが味は甘く、酸味も程良い加減になってきました。
 そして、もうすぐ出来上がるというタンクでは、お米がドロドロのもろみに溶けて、泡もおさまってきています。香りはメロンやリンゴを思わせる、とても良い香りです。でも味は苦いそうです。
 これが「酒母」で、中身は大量の酵母が培養されていて、これからの本格的な仕込みに、その力を十分発揮できるようになります。
 続いて、この「酒母」を元に今度は本格的な仕込みに入ります。
 仕込は「酒母」を大きなタンクに移して、通常は3回に分けて、蒸し米(掛米)と水と麹を仕込んで、その量を増やしていくのです。
 「酒母」の中は元気で活発な酵母がその栄養源となるお米が入ってくるのを待っています。
 仕込の1日目は「添(そえ)仕込」といい、「酒母」の量に見合う蒸し米(掛米)と水と麹を加えて酵母の増殖を促します。でも最初はドロドロの状態なので酵母が十分に活動しやすいように温度を平均に保つために、人の手で「櫂(かい)入れ」をします。
 2日目は「踊り」といい、仕込を1日休みます。この間に酵母が増殖し、酸も出てきて第2の酒母になるのを待つのです。
 3日目は「仲(なか)仕込」といい、2回目の蒸し米(掛米)と水と麹を加えて増量します。
 4日目は「留(とめ)仕込」といい、3回目の蒸し米(掛米)と水と麹を加えて更に増量し、大きなタンクのほぼ3分の2の量まで増やしていきます。 

 なぜ、3分の2かって?その理由は発酵の最中は泡が発生します。その分の余裕を残しておかないとあふれてしまうからです。
 十分に発酵が進み、目的の酒質になったら上槽(しぼり)です。
 仕込み開始後約30日で発酵は終了し、仕込が終わるということになるのです。
 その後、もろみを搾って、お酒と酒粕に分けて製品化されるのです。
 ビデオでは出来上がったばかりの新酒を味見しています。果物の香りとお酒のうまさに感激している様子が映し出されています。
 以上で一連の醸造工程のビデオは終了し、続いて高橋次長の説明が続きます。
 ここ「吉乃川」では、醸造にたずさわるものは全部で23名。そのうち、いわゆる蔵人と呼ばれる杜氏集団に属する、冬場だけの造りに参加する人は15名。この蔵人達は酒造りをしない夏場は農業で米造りをしています。そして、残りの8名は社員です。
 ここにあるのが、この蔵の地下水で仕込み水の「天下甘露泉」です。味見してください。
    
 どうですか、この1本。みたいな顔に写っていますね。
 この一帯の地下水は東山丘陵地からのきれいな水です。醸造に不要な鉄やマンガンなどの含有が少なく、くせがなく軟水で、飲み口の優しい水ですと説明されました。
 では、いただいてみましょう。
 それぞれが自分の目の前にある冷酒用のガラスのグラスに注いで味見です。色は無色透明。なるほど無味無臭で喉ごしがスーッと流れていくような優しい感じのお水です。当然、お水ですから味はしませんが何と表現したらよいか?
 ウーン。あえて言うなら
         「味がある」?

    …第6話につづく…

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