初めての酒造り体験 取材報告  (by えつこ)

新潟県長岡市  葛g乃川

第 6 話

 「瓢亭」での説明も終わり、皆で作業着に着替えていざ出発。ところで皆はちゃんとした作業着ですが私だけは白衣です。申込みの時に作業着の準備のために身長と体重、そしてウエストサイズを聞かれたのですが私の分はご想像にお任せしますと言って置いたのでこうなってしまったのでしょうか?実は着替えの場所がないため、そのまま白衣を着たのでした。ここまで書いていてふと感じたのですが、白衣と言って皆さんがご想像されるのは看護婦さん?えっ?コスプレ?
 残〜念で・し・た。
 研究室で使っている白衣でした。
 でも皆ベージュ色の作業着の中で私だけ赤一点、じゃなかった白一人。他から見たら研究スタッフかアシスタントのように見られるのではないかと自分ではご満悦。
 主人に「どう?かっこいい?」と訪ねると「別に」と、すげない返事。でも、私は気にしない。ルンルンルン。
 脱線はこのくらいにして最初は「白米庫」の見学からです。
 ここは昔、精米機を置いてあった場所です。
 今では精米機はなく、外注で精米してもらって、ここに運び込みます。
    
 精米ということはお米を「擦(す)る」ことになるわけですが、どうしても精米したばかりのお米は熱を持っていて乾燥しています。そこで、ここに精米したばかりのお米を運び込んで2週間放置して、温度を下げると共に熱で失われた水分を自然の状態で調整することになります。これを「枯らし」といいます。
 今、ここにあるお米は新潟県「五百万石」、精米歩合50%のお米ですと、手にとって見せてくれました。
      
真っ白いお米の粒がとてもきれいです。

 普通、お米は皆さん食べているのでご承知でしょうが、楕円形をしていますよね。でも精米歩合50%、つまり半分まで削ったお米はやや扁平ながら丸くなっています。ご飯として食べるお米は心白(しんぱく)と言ってお米の中心が白くなっているとあまり良くないと評価されますが、酒米(酒造好適米)は逆に心白がある方が良いのです。ですからご飯用のお米と酒米は性質から違っていて、酒米は食べてもあまり美味しくはないのです。お酒として美味しくなるためには旨味成分のアミノ酸などが少ない方が雑実のない、きれいなお酒となるのです。フーンなるほど。
 真っ白いお米がまるでビーズのようにきれいです。
    
 せっかくお米の話が出てきたのでここで酒造りにとって、とても大切なお米について「吉乃川」さんがこだわっている点についてご説明しましょう。少々長くなりますがお付き合いしてくださいね。   
 1.米のタンパク質について
 タンパク質の多いお米はお酒にするとアミノ酸が多くなり、雑味が出やすいとされています。
 「吉乃川」では酒造りの中心的なお米として蔵人栽培米を使用しています。蔵人は冬は酒造りをしていますが、それ以外は農業にたずさわっていて普段はお米を作っています。酒造りにたずさわる彼らだからこそ、お酒造りに最も適したお米を作るのに、とても良い協力者となるわけです。
 彼らが作るお米は不要な肥料を施さず、お米のタンパク質含有量を7.5%に押さえる工夫をしています。また、その他のお米も平均で8%以内となっていて、いかに原料米にこだわっているかということを知ることが出来ます。
 しかし、玄米中にタンパク質が全くなくなればよいわけではありません。タンパク質は米デンプンをつなぎ止める役割も持ち、タンパク質が極端に少ないと高度な精米にお米が耐えられなくなるばかりではなく、タンパク質の分解物であるアミノ酸も、少なければ旨味のない、薄っぺらなただのアルコール飲料になってしまいます。
    …第7話につづく…

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