初めての酒造り体験 取材報告  (by えつこ)

新潟県長岡市  葛g乃川

第 12 話

 お米に光があたり、うすく透きとおったように見えますが、その中で麹菌の小さな点がポツポツと黒く影となって見えます。
 もちろんこれも食べてみました。ほとんど蒸し米と変わらない感じです。
でも、ちょっと硬めかなという程度です。
    
 作業は切り返し器を通して固まっている麹をバラバラにして桶に入れ、隣の麹室にある自動製麹機に運ぶ作業です。
 麹担当の平石さんがシャベルで固まっている麹を崩して、切り返し器に運びます。するとあっという間にバラバラにほぐされて出てきます。それを黄色いプラスチックの桶に入れて隣の麹室にある自動製麹機に担いで運んで機械の中に投入します。皆、順番に並んで桶を担いで隣の部屋を往復します。
      
 バケツで2〜3杯入れると、ほぼ一杯になる大きさの桶ですから担ぐ重さは約20kg程度です。
 奥さんはどうしますかと聞かれたので、もちろんやらせてくださいと順番に並びました。
 いよいよ私の番です。蔵人のお兄ちゃんがチラリと私の方を見るやいなやモーレツにお米を入れ始めました。
      
 アレ?アレ?アレ?
何で私だけ、山盛りなの?どういうこと?

 そうです。私が女だからワザとふざけて大盛りにしたのです。
 ・・・・・・やるじゃない。
 何のこれしき。担いでやるわ。
 ・・・・・・う〜ん・・・・・う〜ん
 引きずるのが精一杯。
 思わず台から落としそうになりましたがそこは優しいお兄ちゃん。
 してやったりと、ほくそ笑みながらサッと手をさし出し、支えてくれました。
 と、すかさず平石さんから「おまえの根性がよ〜くわかったよ」と言う声がかかり、皆で大爆笑でした。
 参加者は全て酒販店ですので、この麹室の作業が、どれだけ神経を使う仕事なのかがわかっています。皆が緊張した面もちで作業をしていましたが、この一言のおかげで緊張感もとれ、言われなくても進んで蔵人の仕事の手伝いをするようになり、楽しく作業をすることができました。
 そのころ、隣の部屋はどうなっているのでしょう。
 ちょっと覗いてみました。
 隣の麹室には大きな箱状の機械がありました。これが自動製麹機です。
    
 この会社で開発された自動製麹機により、通常の麹米づくりはその作業の大半を省力化できるようになった訳ですが構造は至って簡単。
 網の上に麹菌の繁殖しかけたお米を入れ、間に空気の層ができるように3段に重ねてフタをします。そしてその上下に温度調整用の空気を送り込む口が付いていて、送風により機械内を指定の時間と温度を保ちながら、丸1日かけて麹菌の増殖を促します。
 この機械によって均質で大量の麹米を、ほぼ自動で造ることができるようになったわけです。
 900kgのお米はこの機械2台に分けて満たしていきます。
 お米を運ぶ人、櫂でならす人、へらで平らにする人。作業は続きます。

    …第13話につづく…

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