初めての酒造り体験 取材報告  (by えつこ)

新潟県長岡市  吉乃川

第 13 話

 麹室の和やかな作業の中でも蔵人はキチンと仕事をしています。
 そして、写真を撮ったりメモを取ったりしていた主人も遅ればせながら作業に参加して桶を担いでいます。
       
 主人は普段から配達が中心の仕事ですから、重いものは任せてよとばかりに一杯にお米の入った桶でもヒョイと担いで運んでいきます。
 隣の部屋の製麹機も2段目までお米が入り、へらで平らにしています。この上にもう一段網を乗せて、お米を乗せていきます。
      
 あれ?ふと、隣を見るともう一台、製麹機があり、フタが開いています。
    
 こちらの機械の中に入っているお米は1日先に進んでいる麹米です。つまり昨日この機械に入れて麹菌を増殖させて完成したばかりの麹が入っているのです。
 失礼してちょっと味見。
 今、運んでいる麹は菌が小さな点のように付着していますが、こちらは所々に産毛のような麹菌が繁殖し、お米の中にしっかりと食い込んでいるように見えます。味はかみしめると甘く先程よりは水分が少ないですが柔らかめの「おこし」になっています。
 ちょうど、そこに平石さんがやってきて、おもむろに木製の「へぎ」を持ってきて、これが「麹蓋(こうじぶた)」といい、手造りで麹米を造るときに使うんだよとその使い方を実際にやって見せてくれました。
 他の人達はまだ、お米運びをしていて私一人。個人レッスンです。
 貴重な経験です。

 まず麹蓋にお米を1.5kg乗せ、片側に寄せます。最初のお米の温度は低目にしておいて、お米を寄せることで麹菌の増殖により、少しずつ温度が上がり始めます。その熱を逃がさないように寄せるのだそうです。
 続いて、少し温度が上がってきたら今度は麹蓋を揺り動かして、真ん中にお米を寄せます。
 次にそのお米の真ん中に手を入れてクルリと円を描くように手を動かすとちょうど真ん中がへこんだ山のようになります。
    
 次にその山を縦長に変形させます。そして、最後に手をヘラのようにして細い筋状の山を造ります。
    
いかがでしょうか。
 芸術的でしょう?あっという間に見せてくれたのです。
 本当に突然に、私だけに実演して見せてくれたので思わず見入ってしまいましたが、もう一度お願いして、その形を作ってもらって写真に納めたのでした。
 ちょうどそこに主人がやってきて、その話を聞き、再度あっという間にやって見せてくれました。主人も大感激。蔵見学はたくさんしているけれど造りの体験は初めて。まして、こんなワザを見せてもらえるなんてと興奮しているようでした。
 このようにして温度を見ながら、その温度に応じて米の置き方を変え、それと同時に5〜6段に積んだ麹蓋の順番も変える。なぜなら上の段と下の段とは温度が1〜2度違うため、均一な繁殖をさせるために定期的に段の組み替えも行うということ。
 だから麹造りは大変な仕事。手作業だと、始めたら丸2日間の間、休むヒマさえないようなこともあるそうです。
 そんな話をしながら突然、平石さんが私にやって見ろと言うのです。
 おもしろそう〜。
 ハイ、やらせてください。

    …第14話につづく…

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