初めての酒造り体験 取材報告  (by えつこ)

新潟県長岡市  吉乃川

第 14 話

 元気良く返事はしたものの、さて、どんなふうにやっていたのか、あまりに鮮やかな手つきだったもので上手く再現できません。
 麹蓋を縦に持って、お米を手前の中央に寄せます。
    
 ガサガサ・・・ザザザザ・・・・
 ザッザッザッ・・・
 揺すっても揺すっても、お米はいうことを聞いてくれません。
 端に寄せようとしても片側に寄ったり、真ん中に寄せようとしても全然寄りません。全然ダメ。
 実際にやってみて、蔵人の技ってすごいなぁと改めて感心してしまいました。
 そんなことをしている間にお米の運び込みも終了し、機械にフタをしています。
    
 一応これで麹の「盛」の作業は終了です。
 続いて「出麹」の作業に移ります。3台目の製麹機の中の完成したばかりの麹を黄色のコンテナの中に移します。
 この機械の構造は同じですから、先程の逆をやればよいわけです。麹をすくって取るのは昔ながらの「箕(み)」という道具です。現在の材質はプラスチックですが昔は竹で編んだ入れ物です。
 麹菌の繁殖で固まっているお米を、くずしながら「箕」ですくってコンテナに移します。脇で待機している人はコンテナの中の麹をなるべく細かく崩します。
    
 一番上の段が終わると網を取り外し、2番目の段という風にすくい終わると次の段をすくう作業です。
 こうして全ての麹をコンテナに移して先程の2階のフロアーに移動させます。

 麹造りは「引き込み」といって室に蒸し米を運び込む作業から始まって、「盛」、そして「出麹」という作業で麹が出ていきます。
 その中の「盛」の工程でこの自動製麹機が活躍するのですが、丸2日間のうち後半の1日分を担当してくれるのです。その働きをご説明しましょう。
 蒸し米は麹菌を付けられて1日、室に置かれます。夕方に1回ほぐされてまた、床むろの上で静かに寝かされます。だんだん麹菌が繁殖します。次に自動製麹機に移して更に麹菌を増殖させることになるわけですが、この時のお米の温度が約34度C。
 麹の繁殖の熱で徐々に温度が上がり36〜38度Cになると自動的に機械が動き始め、その温度を2時間キープします。
 その後更に麹の増殖による発熱で温度が上昇し、最高温度42〜43度Cで更に数時間キープし、丸1日かかって麹を繁殖させるのです。
 この時、湿度はお米の中に水分があるのであまり気をつけなくても問題ないそうです。
 また、なぜこのような温度管理をするのかというと、決まった温度で一定時間保つことで、仕込の時に必要な、お米の中の色々な成分を分解するための有用酵素を麹菌の中で十分に作り出させるためなのだそうです。
 さて、「出麹」の作業も終わって最初の麹室に戻りました。午後から「引き込み」の作業のための準備として「床むろ」の準備をしておきます。
    
 またここに、午後から新しい麹米が入ってくるのです。台の上にきれいに布を広げて、その布の端を台に縛り付け、これで一応、午前中の作業は終了。ここに入る前に着ていた作業服に着替えて「瓢亭」に戻ります。
 でも、その途中で木製の棚がたくさん積んであったので、その説明をしてもらいました。

    …第15話につづく…

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