初めてのウイスキー蒸留所 報告記  (by えつこ)

山梨県白州町  サントリー白州蒸留所

第 9 話

 .貯蔵・・・
 待たせてあったバスに戻り、次は貯蔵庫の見学です。
 貯蔵庫のエントランスに入ったとたん、ウイスキーの芳香が強烈に漂ってきます。無色透明な原酒(ニューポット)は北米産ホワイトオークの樽に詰められて貯蔵庫で長く、深い眠りにつきます。樽材を通してウイスキーはゆっくりと外気と呼吸し、また樽材から溶け出してくる微量成分と溶け合いながら、やがて琥珀色に色づき、まろやかな香味を備えていきます。これが長い年月を要する樽貯蔵によるウイスキーの熟成です。
 ここ白州では最長20年熟成しているものもあるとか。樽の1つ1つはコンピューターで記録されていて高さは10段。棚のサイドの無人エレベーターで必要な樽を取り出すことが出来るのだそうです。
 この膨大な樽の管理はブレンダーが行っていて熟成具合などを確認して適当なところで製品用に使われたりブレンドされたりするそうです。
 ここでウイスキーの熟成と樽について少し資料からご説明しましょう。
 ステンレスの容器にニューポットを貯蔵しても熟成は起こりません。ガラスの容器でも同じこと。オークの木、正確にはコナラ属の木(ミズナラ、コナラ、ナラガシワ)でつくった樽でないと、ウイスキーの琥珀色で豊潤な香味は得られません。コナラ属の木は英語でオーク。通常高さは25m、時には直径3m、高さ50mにも達します。樽材に使われるのはその中でも樹齢100年以上のものが使われます。尊い木と書く樽はこんな楢の木からできているのです。
 楢(ナラ)という字も酋(おさ)の木と書き、これは壷から酒の香気がもれる様を表す象形文字で、酒づくりの長(おさ)や一族を束ねる長を意味します。まさに楢の木は、木の王なのです。
 また、先ほど説明しました熟成のメカニズムですが詳細は十分に解明されていません。それは、同じ木目の板が一枚もないように、厳密には同じ樽もひとつとして存在しないからです。樽が変われば、また貯蔵庫のある場所、位置によっても熟成の具合は微妙に違ってきます。

 熟成に影響を与える天候や年によって一定ではありません。仮に一定にできたとしても、化学分析の結果は貯蔵してから10年、20年も経たないと得られないのです。こうしてみると、熟成とはオークという木とウイスキーとの間で繰り広げられる、年月をかけた神秘のドラマだということがわかります。恵まれた自然環境に抱かれ、ウイスキーは樽の中で眠る。つまり自然というゆりかごの中でウイスキーは成長し、個性を磨いていくのです。
 そして、樽は麦や水や酵母と並んでウイスキーの原料そのものといっても良いでしょう。(白州蒸留所パンフより引用)
 さて、見学コースはここで終了し、後は試飲会場で皆さんお待ちかねの試飲となります。しかし、製造工程はもう少し続きますのでお付き合い下さい。
 6.ブレンド・・・
 熟成したモルトウイスキーはひと樽ごとに個性が違います。ブレンダーは多彩な個性を組み合わせ、めざす製品のモルトの個性に仕上げます。これにさらにグレーンウイスキーを合わせて、まろやかな風味に仕上げることをブレンドといいます。
 7.後熟・・・
 ブレンドされたモルトウイスキーは再び樽に詰められ、貯蔵庫に入ります。これを後熟(マリイング=結婚)といいます。いわばモルトウイスキーとグレーンウイスキーのハネムーン。両者がよく溶け合い、なじみ合い、まろやかなハーモニーを奏ではじめたところで後熟は終わります。
 8.瓶詰め・・・
 こうして後熟を終え、磨き上げられたウイスキーは瓶詰め工場でボトルに封じられ、真新しいラベルが貼られます。そして、機械と人の目による厳しい品質チェックを受け、合格したウイスキーだけがお客様にお届けすることができるのです。
(主人注釈:皆さん、ローヤルの瓶を見たことがあると思いますが、栓の所は「ひも」で縛ってありますよね。あれは機械ではできなくて一本一本全て、人の手で縛っているのです。熟練者の手に掛かるとあっという間に縛ってしまいます。)  …第10話につづく…

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