初めての酒蔵見学 取材報告2    【by Etuko】

栃尾市 越銘醸株式会社

第 13 話

 蔵の2階、そこは板の間です。タンクに抱かせた雪が溶けると水になってバケツでその水を受けています。
 不自由そうだなあと思っていると、実はさっき答えた理由は対外的に負け惜しみとして言っている理由で実は単に1階に場所がないということでした。なあんだ。本当の理由は至ってシンプル。そういうことかとすぐに納得。
 続いて他の大きなタンクの様子を見てみましょう。突然杜氏が蔵の中央部に歩いていって床板の一部をはずしました。
    
 そうです。酒蔵の2階の床の下はすぐに仕込みタンクになっているのです。ですからちょっと床板をはずしてそこから麹、蒸し米、水などをタンクの中に投入して仕込み、そして発酵をまんべんなくさせるために櫂入れという作業をするために、このだだっ広い2階にほとんど何も置かないのです。
 そういえばそうでした。うっかり忘れていました。杜氏の後ろからその床板をはずしたところを覗いてみました。
 ちょうど1メートル位下にタンクの口がありました。そのタンクはまだ盛んに発酵しているようで、発酵による泡を消すために上部にモーターがあり、タンクの中のプロペラをまわしています。
    
 このこうして泡をかき混ぜて消してやらないとあふれてしまうからです。
 これは仕込み後7日目の本醸造酒用のタンクです。まだ香りはしてきませんでした。
 続いて窓際の床板がはずされています。そこも覗いてみましょう。あれ?竹の棒がタンクに突っ込んであります。そうです。これは櫂棒といって先に小さな木の板が付いていて、仕込んだ後のもろみが十分に発酵するように時々タンクの中をかき混ぜるための棒なのです。
      

 ちょっと杜氏が席を外した隙に櫂棒を動かしてみようと思いました。
 ウーン、全然動きません。
    
 そこに杜氏が戻ってきて、これは仕込み5日目かな、投入したばかりのような掛け米が見えます。当然発酵による泡も立っていません。このような状態の時は発酵の初期にでる炭酸ガスが蒸し米を下から押し上げてきているため、とても私の力では櫂棒を押し込むことは出来ません。無理しない、無理しない。
 さて、大切に育てたもろみは仕込み開始から約1ヶ月前後で発酵を終了しますが相手は生きている酵母です。どこでその発酵の終了を見極めるかは杜氏が決めます。泡の状態、温度、その他もろみの成分変化などを確認してタイミングを決めるのです。
 それでは次はもろみを搾る「上槽(じょうそう)」に移ります。
 こちらでは2号蔵の奥で行います。移動しましょう。
 蔵の1階に降りてくると蔵人が忙しそうに働いています。
 ちょうど試桶(タメ)を使って水を運んでいるようです。
      
 相当重いはずなのに軽々と、また、全然こぼさずにハシゴを登ります。エーッ?、もしや私みたいな美人が見学に来たから無理して平気な顔を装ってやっているんじぁ・・・
  冗談は止めておきましょう。
 さすがに蔵人はてきぱきと仕事をします。ハシゴの上の蔵人が運ばれてきた試桶(タメ)のにぎりをつかみ、もう片方の手で底を持ってタンクに水を運んでいます。
     
 見ていて小気味良いくらいです。ご苦労様ですと思わず心の中で思ってしまいました。
    …第14話につづく…

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