最新設備の酒蔵 取材報告  (by えつこ)

新潟県新潟市  高野酒造

第 6 話

 もろみを搾ることを「上槽」といい、お酒と酒粕に分けることになるわけですが、この時に圧力を上げてしっかり搾ればお酒として取り出せる分が増えて儲かります。
 でもあまり圧力を上げて搾ったお酒は酒粕の中の雑味がお酒の中に入ってしまうためによいお酒にはなりません。
 そこで「粕歩合」ということを考えなければなりません。「粕歩合」とは、もろみを100として、粕として残るものがどれくらいあるかということを言い表す表現方法です。
 例えば「粕歩合」60%というと、もろみの60%を粕として捨てて、お酒は40%しか搾られていないということになります。
 「粕歩合」が他の都道府県より高いといわれている新潟県の平均で25〜28%です。
 しかし、ここでは現在、普通酒でも最低38%。目標として40%。大吟醸では60%で搾っているのだそうです。これは非常にもったいないのてすがねと何気ない言い方で言ってしまう白井杜氏。素朴な人柄の白井杜氏だからこそ平然と言い切ることのできるセリフなのかなと思いました。
 実はこれはとてもすごいことなのだと隣で主人が耳打ちをしてくれました。
 続いて槽式搾り機を見せてもらいました。槽の中はきれいなステンレス張りになっています。
       
 これは主に大吟醸などの高級酒を搾るときに使います。
 この方が吟醸酒などの小さなタンクで造られた少量のもろみを搾るときに向いていて、また、圧力をかけないで自然にもろみを搾ることが出来るので昔から使われている仕組みの搾り機なのだそうです。
 構造は機械の下部に槽という入れ物があり、そこにもろみを小さな酒袋に入れて底の方から敷き詰めて、それを何段にも重ねていきます。するとそのもろみ自体の重さで数時間ほどお酒が自然に流れ出てきます。 袋を「ろ紙」代わりにしてお酒が袋の編み目を通り抜けて下に流れ出てくるのです。

 最初に出てくる、少しにごりのある部分を「あらばしり」。このお酒は軽快でフレッシュな香りのお酒になります。
 しばらくするとにごりが無くなってお酒が澄んできます。
 その部分を「中取り」といい、香りと味わいのバランスがとれた最も良い部分といわれています。
 その後、自然に滴り落ちるお酒が出てこなくなると、ようやくこの機械が活躍します。最後に上にフタをして圧力をかけてもろみを搾ると「責め」と呼ばれます。
 この搾り機は多くの人手と時間を要することが大きな欠点ですが、もろみ自体の重さで自然に流れ出してくるお酒は、無理な力を加えていないために品質の良いお酒が得られやすいという長所があるのだそうです。
 この槽(ふね)で最大2000リットルのもろみを搾ることが出来るのだそうです。
 特に品評会に出品するようなお酒は特別に「袋づり」といって、もろみを酒袋に入れて、空の小さなタンクの上に釣っておき、1滴1滴と滴り落ちるお酒を集めて取るそうです。     
 1升瓶100本くらい取り、その中の20本を選び、更にその中から選んで出品するのだそうです。
 普通の搾りはこの2種類の搾り機で搾りますが、搾り出されたお酒はこの機械のそばにある亀口を経由して貯蔵タンクに送られます。
      
 いつもなら、ここで亀口からしぼりたての生原酒の味見が出来るのですが、今日の造りはお休みです。ですからしぼりたてのお酒もここにはありません。
 あのちょっと酸味のきいた、まだ、発酵による炭酸ガスが残っていてピリピリとしたフレッシュな香りのフルーティーなしぼりたて生原酒。
 あれを味見できなければ私にとって楽しみは半減。私にとって食べる事や飲む事はとても大事なのです。私にとっての価値観は・・・・
 これ以上は止めておきましょう。
    …第7話につづく…

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