日本のワインのルーツを訊ねて 取材報告  (by えつこ)

山梨県勝沼町  メルシャン勝沼ワイナリー
        マンズ勝沼ワイナリー

第 16 話

 いよいよ試飲開始です。主人は次々とわたしのタートヴァンにワインを注いで、これはぶどうの品種がどうだとか、この品種とこの品種の割合がどうだとか、この品種はあまり使われていないから味見をしておいた方がいいよとか次から次へと試飲させようとします。
   
 私はその試飲させられるワインとそれがいくらのものなのかを棚の中からプライスカードを探し出し、価格と合わせながらついていくのに必死です。
 結局主人がいいというワインは私には渋くて複雑な香りと味がしてあまりおいしいとは思いませんでした。特に樽熟成をしたものは癖があってあまり好ましいとは思いませんでした。
 わたしはもっと軽くてさっぱりと飲みやすいワインの方がいいなと言ったら、それは安いワインが好みだということになるそうで、なんて私は経済的な女なのでしょう・・・?
 なるほど主人が良いとか美味いとか言っていたワインはお値段も高い方のワインでした。
 そして友人のおみやげとして何本か買うことにしました。酒屋なのにどうして、ここでワインをおみやげに買うのか不思議に思われるでしょう。
 実は、いわゆる地元ワインと呼ぶような小さなワイナリーのワインはこちらでしか買えないのです。流通範囲が狭く、新潟まで出回らないのです。
 確かに新潟には岩の原葡萄園を筆頭に小さなワイナリーが4つあります。しかしそれ以外の国産ワインは大手のメーカーのワインと、ごく一部の近県の限られたワインしか流通していなくて勝沼の小さなワイナリーのワインは飲んだことがないのです。
 ここ勝沼町だけで地図に載っているぶどう園が132、ワイナリーが35もあるような所ですのでそのバリエーションの豊富さといったら新潟と比べるまでもありません。その代わり日本酒と言ったら100以上の蔵元がありますけどね。まあそれはさておいて、おみやげですが「日本のワインのルーツを訊ねて」という目的で来た今回の旅行ですから、ちょっと変わった視点で選んでみました。

 明治時代に渡仏した2人の青年の内の1人、土屋龍憲が創始者となっている“まるき葡萄酒”のワインを数種類とあとは“勝沼醸造”の地元ならではのセパージュから数本選び、買ってきました。おみやげですから決して高いワインは買わなかったのですがめずらしいということで喜んでくれると思います。
 さて、セパージュと言う言葉が出てきましたがワインに使われているぶどうの品種のことで、ちょうどセラーの中にその説明がありましたので参考に掲載しておきます。
 まずは赤ワイン品種から。
マスカットベリーA
 川上善兵衛氏作出の生食・醸造兼用の傑作的な県産赤ワインの主要品種。樹勢旺盛で多収量。果粒は大粒、黒色で完熟果はコクのあるワインになる。
ブラック・クイーン
 川上善兵衛氏作出の樹勢旺盛な多収量の赤ワイン醸造専用品種。果粒は中粒、紫黒色で酸味と渋味が強く、主に赤ワインのブレンド用に使用される。
カベルネ・ソーヴィニヨン
 ボルドーの主要な赤ワイン品種として最も世界的に著名な品種。果粒は小粒、青黒色でやや渋味が強いが熟成すると深紅色、スミレ香のある女性的な繊細さを持つ高級ワインになる。
カベルネ・フラン
 ボルドー産赤ワインの主要品種。果粒は小粒、黒青色でカベルネ・ソーヴィニヨンよりやや香りが低いが熟成すると輝き紅色の繊細なワインになる。
メルロー
 ボルドー産赤ワインの主要品種。果粒は中粒、紫黒色で、カベルネ種より渋味は少ないが、スミレ香のあるソフトなワインになる。
ピノ・ノワール
 ブルゴーニュ産の主要な著名品種で、シャンパンの原料としても知られる。果粒は小粒、紫黒色、ホーズキ香の暗紅色で男性的なこくのある高級ワインになる。

    …第17話につづく…

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